近年,大学教育において教員の授業力量形成を支援するための取り組みとして授業検討会が定着しつつある.本研究では,特に授業検討会での学びを授業実践に活かすことが課題となる大学初任教員に焦点をあて,授業検討会における談話の特徴とその後の授業実践への影響を明らかにすることを目的とした.具体的には,長期にわたり実施されている「京都大学文学研究科プレFDプロジェクト」を事例として,当該プロジェクトに継続参加している初任教員を対象に授業検討会の談話分析および授業VTR の分析をおこなった.その結果,授業検討会における談話は,授業内容や説明に焦点化しやすく,授業目標や評価に関するものは出現しにくいことが明らかになった.授業検討会での談話が授業実践に与える影響では,学生からの談話や代案まで提示された談話が反映されやすい可能性が示唆された.一方で,授業実践への反映には,談話にもとづき取り組みを変化させたものや新たな試みを導入したものだけでなく,実施そのものを取りやめてしまう反映も確認された.