本研究では,初修中国語学習者を対象に声調知覚能力を向上させるため,声調の知覚訓練に特化した学習ツールを開発し,大学における初修中国語を履修するクラスで実験的に用い,その効果を検討した.再生法に基づき,連続した音声から各個別音の声調を知覚させるという学習メソッドを考案した上,それを学習ツールに取り込んだ.これにより,学習者個々の習得状況に合わせて,声調の混同回避対策に基づいた訓練を行い,声調知覚能力を向上させることが期待できると考えた.その学習ツールを使用した学習効果について,日本人大学生24名を対象に,声調知覚テストの比較を行った結果,学習ツール利用者の成長率は学習ツール非利用者の成長率より大きかったものの,グループ間に有意差はなかった.しかし一方で,本学習ツールが声調知覚能力の改善に直接的な影響を与えるとは言えないものの,声調学習に対する学習意欲を向上させることが示唆された.