日本教育工学会論文誌
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論文
  • 小島 亜華里, 泰山 裕, 黒上 晴夫
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 217-228
    発行日: 2022/02/02
    公開日: 2022/06/22
    [早期公開] 公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,教師が目指すべき思考態度を明確に持ちながら思考する文化をつくるための方法を検討するために,思考スキルを指導する教師が重視する思考態度と実践している思考する文化に関わる指導事項を明らかにすることである.思考スキルの指導に取り組む教師が重視する思考態度として,12の思考態度を明らかにし,先行研究で示されている思考態度と比較した結果,思考スキル指導と併せて重視すべき思考態度として先行研究で示されている思考態度をそのまま援用することができない可能性が示唆された.また,思考する文化に関わる指導事項として,27の指導事項を明らかにした.2つの結果の関係性を整理したことで,思考する文化に関わる指導には,特定の思考態度の育成に関係する指導と,そうしたことを想定しない指導があることが示唆された.

  • 武田 佳子, 溝口 侑, 溝上 慎一
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 229-239
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,リーダーシップの発揮に有効とされるリーダーシップ自己効力感とレジリエンスに着目し大学4年次と社会人1年目で縦断調査を行った.学校から仕事・社会への移行(トランジション)におけるリーダーシップ自己効力感(LSE;変革力・遂行力・共感力・鼓舞力)とレジリエンス(BRS;資質的・獲得的)の相互関係の検討を行うため,縦断データを用い交差遅延効果モデルによる分析を行った.その結果,大学から社会人1年目でLSE の4因子及びBRS の2因子すべてで有意な得点の低下が見られた.また,大学4年次の資質的レジリエンスから社会人1年目のLSE の遂行力,変革力,鼓舞力へ,大学4年次の獲得的レジリエンスから社会人1年目のLSE 遂行力へ有意な正の影響が見られた.大学4年次のLSE から社会人1年目のBRS への影響はみられなかったことから,大学までにレジリエンスを身につけることは,社会人1年目において,共感力以外のリーダーシップ自己効力感に効果がある可能性が示唆された.

  • 稲葉 利江子, 高比良 美詠子, 田口 真奈, 辻 靖彦
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 241-253
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    [早期公開] 公開日: 2022/01/12
    ジャーナル フリー

    2020年度新型コロナウィルス感染拡大防止のため,大学教員は否応なくオンライン授業に取り組むことになった.オンライン授業において授業効力感を得られた場合,多くの授業が対面授業に戻った後も,部分的にオンライン授業やICT ツールを継続的に利用していく可能性がある.そこで,本研究では,大学教員のオンライン授業における授業効力感に着目し,「ソーシャルサポート」,「学生の受講態度」,「授業内のICT 利用量」の3要因からの効果を明らかにすることを目的とした.具体的には,2020年7月〜8月に大学教員向けに実施したアンケート調査を基に,オンライン授業における授業効力感が,「指導方略」,「学生の状況把握」,「学生の活動促進」の3因子からなることを明らかにした.その上で,「ソーシャルサポート」,「学生の受講態度」,「授業内のICT 利用量」の影響を検証するため,階層的重回帰分析を行った.その結果,講義,演習・実習,ゼミ・セミナーという授業形式に依らず,「学生の受講態度」が教員のオンライン授業における授業効力感の向上に全般的に影響を及ぼすことが明らかとなった.

  • 髙見 佳代, 尾澤 重知
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 255-273
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    理系に進学する女子学生の少なさの原因として,ステレオタイプの存在が指摘されている.本研究の目的は,文理選択時に学校教師,塾講師,親,友人からのステレオタイプの言動が女子学生自身の内面化や価値観,信念にどのような影響を及ぼしたのかを明らかにすることである.文理融合学部において女子学生を対象に半構造化インタビュー調査を行った結果,文理選択時における学校教師,塾講師の言動は,当時の研究協力者の持つ価値観や信念等,内的要因と相互に影響し合っていることが示唆された.教師と女子生徒との間に信頼関係が構築されている場合や理数科目が得意な女性が身近に存在している場合は,ステレオタイプの言動があったとしても意欲への影響は受けにくい可能性があった.また,女子生徒が理数科目につまずいた際の学校教師や塾講師のサポートの有無の影響も示唆された.サポートがなく理数科目に対する意欲が低下している時に,文系に女性が多いという外的要因があることで,「女性は文系」というステレオタイプが喚起されて,文系が選択されている可能性がある.

  • 安永 太地, 満下 健太, 上田 大介, 塩田 真吾
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 275-288
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    [早期公開] 公開日: 2022/04/09
    ジャーナル フリー

    近年,スポーツ界では,多くのトラブルが取り沙汰され,スポーツ・インテグリティの保護・強化が注目されている.特に教育的アプローチが重要とされているが,スポーツ・インテグリティに関するトラブルの実態調査は少なく,その実態は不明瞭な状況である.本研究では,スポーツ・インテグリティに関わる10項目のトラブルについて,場面想定法を用いて選手や指導者のスポーツ・インテグリティ態度の実態と規定する要因を明らかにすることを目的とする.クロス集計の結果から,10項目のトラブルを相対的にみると「セクハラ」「暴力」「差別・偏見」のスポーツ・インテグリティ態度が低いことがわかった.また,因子分析の結果から,スポーツ・インテグリティ態度の因子構造は判断基準の明瞭性によって分けられ,判断基準明瞭場面と判断基準不明瞭場面の2つであることが示唆された.判断基準不明瞭場面は判断基準明瞭場面と比較すると,選手・指導者ともに問題行動に共感しやすい傾向にあった.

  • 上岡 伸
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 289-302
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,研修効果レベル2(学習)の測定手法としての平松(2001)のキーワード法について,測定の効率化と評価基準の明確化を目的とする改訂を行った.改訂はGOLLWITZER(1999)の知見を踏まえて行い,教員研修の専門的組織である教育センターの指導主事らが内容的妥当性を確認した.基準関連妥当性の検討を行うため,初任者研修の受講者に対して事前事後の2時点で調査を行ったところ,175名分の有効回答を得た.構造方程式モデリングによる分析の結果,レベル1(反応)とレベル2の相関に有意な傾向は確認できなかったが,先行研究とは矛盾しない効果量は見られた.また,レベル2は行動意図の変化に対し,行動に対する態度・主観的規範・知覚された行動統制感の各変化成分を媒介した間接効果を持つことが示され,これらは基準関連妥当性を支持する証拠となった.さらに,Web フォームの導入により運用性の向上も達成された.

  • PISA2015データの二次分析を通して
    中村 大輝, 堀田 晃毅, 西内 舞, 雲財 寛
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 303-312
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    [早期公開] 公開日: 2022/01/21
    ジャーナル フリー

    本研究は,社会認知的キャリア理論(Social Cognitive Career Theory, SCCT)に基づき,我が国におけるSTEM キャリア選択に影響する要因とその性差を検討した.OECD が実施したPISA2015調査の日本データを用いて,SCCT のキャリア選択モデルを追試した結果,当該モデルは日本の高校生のデータにも十分に適合することが明らかになった.多母集団同時分析の結果より,STEM職業志望への有意な影響が認められた要因としては「自己効力感」「結果期待」「興味」「社会経済文化的背景」があった.このうち,「結果期待」「興味」「社会経済文化的背景」の影響には有意な性差が見られたが,「自己効力感」の影響には性差が見られなかった.本研究の結果に基づけば,STEM キャリア選択者を増加させるためには,性別ごとに異なる介入方法が有効である可能性がある.

  • 伊藤 貴昭
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 313-324
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,自分の理解を確認するための説明活動に焦点を当て,説明者および聞き手に及ぼす影響を検討した.統計学の「カイ二乗検定」を材料に,大学生を対象にオンライン上で実験を行った.32名の大学生をペアに分け,一人を説明者(16名),もう一人を聞き手(16名)として,説明者には理解を確認するための説明をオンライン上で生成させ,それをレコーディングした.聞き手にはペアの相手の映像を視聴させた.事後テストを比較したところ,両群の間に有意な差は検出されなかった.発話をカテゴリー分析した結果,理解に寄与するとされる「データの意味づけ」に関する発話のみ,説明者の事後テストとの間に有意な相関関係が見られた.また,説明前後の自己評価から,説明者と聞き手では自己評価の変化に違いがあることが示された.本研究の結果は,理解確認のための説明を実施する際に説明者および聞き手それぞれに対する留意点を示唆している.

教育実践研究論文
  • 中学校社会科歴史的分野を事例に
    佐藤 真大, 榊原 範久
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 325-337
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    情報化の進展により生徒のインターネットを用いた情報収集が学校内外で日常化している.それに伴い,現代で求められるメディア・リテラシーを問い直し,学校教育のなかで育成することが求められる.本研究では,中学校社会科歴史的分野において,学習者がWeb 情報を批判的・分析的に読み取り,その信憑性を評価する活動を設定し,メディア・リテラシーを育成する学習教材を用いた授業実践を行った.学習教材としてWeb 情報評価シートを開発し,その効果を検証した.検証の結果,学習者はWeb 情報を鵜呑みにせず,批判的な思考を働かせ,情報の信憑性を判断するようになったことが示唆された.また,情報発信者の目的や立場,情報の更新日を探索し,Web 情報を多面的・多角的に分析し,信憑性を判断するようになったことが示唆された.以上のことから,メディアの受容能力の向上に対して効果がみられた.一方で,メディアを介した表現能力の向上については課題が残った.

  • 梁 辰, 王片 桐望
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 339-349
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    本研究では,初修中国語学習者を対象に声調知覚能力を向上させるため,声調の知覚訓練に特化した学習ツールを開発し,大学における初修中国語を履修するクラスで実験的に用い,その効果を検討した.再生法に基づき,連続した音声から各個別音の声調を知覚させるという学習メソッドを考案した上,それを学習ツールに取り込んだ.これにより,学習者個々の習得状況に合わせて,声調の混同回避対策に基づいた訓練を行い,声調知覚能力を向上させることが期待できると考えた.その学習ツールを使用した学習効果について,日本人大学生24名を対象に,声調知覚テストの比較を行った結果,学習ツール利用者の成長率は学習ツール非利用者の成長率より大きかったものの,グループ間に有意差はなかった.しかし一方で,本学習ツールが声調知覚能力の改善に直接的な影響を与えるとは言えないものの,声調学習に対する学習意欲を向上させることが示唆された.

  • エンゲージメント・学習方略の観点からの分析
    中西 一雄, 加納 圭
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 351-362
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    [早期公開] 公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    本研究では,1人1台端末の活用による学習記録の可視化・俯瞰化を通した理科の学習におけるリフレクションが,生徒の理科の学習意欲に及ぼす影響を明らかにするために,エンゲージメントと学習方略の使用の変容に着目し,中学生を実験群と統制群に分け,2群比較を通してその効果を検討した.中学校理科第一学年物理分野の「光・音・力」の単元において,タブレット型情報端末を活用したリフレクションを実践し,その前後における生徒のエンゲージメントと学習方略の変容を分析した.分析の結果,リフレクションを行った群において行動的エンゲージメント及びメタ認知的方略,認知的方略,協同方略の使用の増加が確認された.研究を通して,1人1台端末の活用によって学習記録を可視化・俯瞰化すること,また,それらを用いたリフレクションに取り組むことで,「光・音・力」の単元における,学習意欲の改善につながる学習方略の使用を促すことができる可能性が示唆された.

  • アクティブラーニング導入を目的としたプレFD の参加者に対する追跡調査
    香西 佳美, 田口 真奈
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 363-376
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    [早期公開] 公開日: 2022/05/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,プレFD の経験を通した大学初任教員の授業実践の変化と授業に対する信念の影響関係を明らかにすることである.このため,アクティブラーニング導入を目的としたプレFD 参加者6名に対する追跡調査を実施した.その結果,プレFD 参加前後での授業実践と信念の変化には,いずれも変化しない場合,いずれも変化する場合,授業実践は変化するが信念は変化しない場合があることが確認された.そして,授業実践の変化には信念や知識の変化にともなって自らの選択で授業実践を変える「自律的変化」と,研修や大学の方針などの外部領域からの影響によって信念の変化はなくとも授業実践を変える「他律的変化」が存在することが明らかになった.さらに,「他律的変化」による授業実践であっても専門家による支援などによって教育効果を十分に認識できた場合,授業に対する信念が変化する契機となり,後の「自律的変化」につながる可能性が示唆された.

教育システム開発論文
  • 内山 慎太郎, 吉田 光男, 梅村 恭司
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 377-392
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    [早期公開] 公開日: 2022/02/01
    ジャーナル フリー

    教師から学習者に対して動画にアノテーションをつける機能「ステアリング・マーク」を,反転授業の事前学習動画視聴システムに実装し,その有用性を評価した.ステアリング・マークは,教師による丹念な設計という観点から着想を得て,学習者の個性に合わせた指導・支援を目的とし,学習者の立場に応じて動画の提示方法を変更する手段を提供する.印象評価実験によって,ステアリング・マークは学習者にとって受け入れられるものであることが示された.また,ステアリング・マークが提供する学習の個性化を支援する方策が学習者らにとって望ましいものであるとわかった.さらに,視聴行動ログの分析による有用性の検証から,ステアリング・マークが学習者の動画視聴行動に対して,自身の理解が足りていない場所の反復視聴を補助していることが示された.

資料
  • Focusing on "Preparing for Future Learning" Research
    吉田 英彰
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 393-403
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    本稿は,未来の学習のための準備(Preparation for Future Learning:PFL)研究に着目し,個別最適な学びの実現について検討を行った.1999年から2020年の間に,学術誌に査読付き論文として掲載された論文のうち,ICT を活用したPFL に関する論文に絞り研究内容のレビューを行った.その結果,ICT を活用したPFL により,既有知識や学習達成度を把握でき指導の個別化に有効であること,自己調整しながら学習を進めることができ学習の個性化に有効であることが示唆された.最後に,PFL の知見を個別最適な学びのアプローチの一つとして位置づけ,今後研究を進めていく上での課題を検討した.

  • 実習エンゲージメントを媒介したモデルの検討
    清水 優菜, 山本 光
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 405-418
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,実習校での指導教員の関わりと実習前の教職意識が実習エンゲージメントを媒介して実習後の教職意識に及ぼす影響と,影響プロセスにおける実習要求度の調整効果を検討することであった.教員養成課程の学生240名を対象にWeb 調査を行った.その結果,(1)指導教員からの学校教育や実習生活に関する知識の提供は実習エンゲージメントを媒介して,教師効力感と教職志望度と正に関連する,(2)実習エンゲージメントの寄与は学級管理・運営効力感と子ども理解・関係形成効力感では大きいが,教授・学習効力感では小さい,(3)検討した影響プロセスにおいて実習要求度の調整効果は認められないことが示された.以上から,実習生の教師効力感と教職志望度,特に学級管理・運営効力感と子ども理解・関係形成効力感を高めるには,指導教員からの学校教育や実習生活に関する知識の提供を充実させることが有効である可能性が示唆された.

寄書
  • 上野 雄己, 日高 一郎, 福留 東土
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 46 巻 2 号 p. 419-423
    発行日: 2022/05/20
    公開日: 2022/06/22
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,中等・高等教育での議論経験と市民性の関連を検討することである.分析対象者は都内中等教育学校の卒業生392名である.カテゴリカル因子分析の結果から,市民性尺度は政治への関与行動とコミュニティへの関与行動の2因子9項目から構成された.次に,社会人口統計学的要因を共変量とした媒介分析の結果から,市民性の下位尺度である政治への関与行動,コミュニティへの関与行動ともに,中等教育での議論経験が直接的に関連する経路と,高等教育での議論の成功経験を介して,間接的に関連する経路が確認された.

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