2022 年 46 巻 2 号 p. 405-418
本研究の目的は,実習校での指導教員の関わりと実習前の教職意識が実習エンゲージメントを媒介して実習後の教職意識に及ぼす影響と,影響プロセスにおける実習要求度の調整効果を検討することであった.教員養成課程の学生240名を対象にWeb 調査を行った.その結果,(1)指導教員からの学校教育や実習生活に関する知識の提供は実習エンゲージメントを媒介して,教師効力感と教職志望度と正に関連する,(2)実習エンゲージメントの寄与は学級管理・運営効力感と子ども理解・関係形成効力感では大きいが,教授・学習効力感では小さい,(3)検討した影響プロセスにおいて実習要求度の調整効果は認められないことが示された.以上から,実習生の教師効力感と教職志望度,特に学級管理・運営効力感と子ども理解・関係形成効力感を高めるには,指導教員からの学校教育や実習生活に関する知識の提供を充実させることが有効である可能性が示唆された.