2025 年 49 巻 3 号 p. 477-486
本研究は,学習に対して抱くコストが学習活動に与える影響について,期待価値理論におけるコストの多次元性に着目して検討した.対象者は中学生333名であり,コスト認知,達成目標,学習方略の使用について質問紙調査を実施した.データの分析の際,コストを1次元的にとらえるだけでなく,機会コスト・努力コスト・心理コストと多次元的にコストをとらえ,それぞれのコストが達成目標を媒介して,学習方略に与える影響を確認した.コストを1次元でとらえた場合,先行研究と同様に学習方略と負の関連がみられた.一方,多次元的にコストをとらえた場合,機会コストは学習方略と負の関連がみられたが,努力コストは学習方略と正の関連がみられた.また,心理コストは達成目標との正の関連がみられた.本研究の結果から,各次元のコストと達成目標,学習方略との関連は異なることが明らかになり,多次元のコスト認知が学習活動に与える影響を検討する意義が示唆された.