論文ID: 48018
本研究の目的は,高等学校でICTを利用した授業を分析し,ノートや作品等の「共有」がもたらす教育的意義について検討することである.そこで本稿では,高等学校の世界史と化学のタブレットが使用された授業を対象に,解釈学的現象学に立ち,1)授業を観察しながらフィールドノート授業記録を作成する,2)授業記録から語を切り出したり単語や短いフレーズによる記述的コーディングを行ったりする,3)パターン・コーディングをした後,4)テーマを生成するという手順で分析した.その結果,授業の「ノートの見せ合い」に該当すると考えられる「個人作業の成果の共有」の教育学的意味として,1)恥ずかしがる余地のない共有,2)共有と取捨選択による一部/全体の2次利用,3)参照のための公正な採用基準を明らかにした.本稿ではさらに結果を踏まえて,共有の有する残酷さを認めた上での1人1台端末時代における共有の再考,単純で機能的な共有に陥らないための授業のあり方,そして授業の中で生徒が主体的に成果物を参照できる共有の意義について考察した.