日本森林学会誌
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論文
新潟県阿賀町三川地域における天然スギの利用
龍原 哲 山田 弘二明石 浩見竹内 公男
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キーワード: 天然スギ, 択伐, 頭木作業, 雪橇
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2020 年 102 巻 5 号 p. 288-299

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抄録

新潟県阿賀町三川地域の綱木,中ノ沢には頭木作業によって,地際から2 m以上の位置で多数の幹分かれが見られる台杉状天然スギが点在している。本研究では,この地域の台杉状天然スギを含む天然スギの過去の利用実態,頭木作業が行われた理由と台杉状天然スギが残存した理由を示した。江戸時代,天然スギは択伐され,家屋建築用材,船材,曲げ物,屋根葺き用の板などに用いられてきたが,これらの材のうち家屋建築用材だけが幹の上部から採材されていた。残存する台杉状天然スギの主幹の伐採高はこの地域の積雪深とほぼ一致した。民有林では昭和30年代まで積雪期に伐採し,雪橇で搬出していた。そのため,頭木作業をした理由は家屋建築用材を得るための雪上での伐採によるものと考えられる。台杉状天然スギのうち台の部分は板材等に利用されたが,台の部分が長く太い一部のものは銘木としての価値があった。しかし,残りは木材としての価値が低いと見なされたため,落葉広葉樹林内やスギ人工林内に残存した。

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© 2020 一般社団法人 日本森林学会
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