2023 年 105 巻 7 号 p. 245-251
成長に優れる系統および初期サイズの大きな苗を活用した下刈り省略の可能性を検討する目的で,スギ特定母樹県姶良20号のコンテナ中苗(苗高約90 cm)を植栽し3年目以降の下刈りを省略した林地において,6年目までの植栽木の成長と競合植生を調査し,裸普通苗(毎年下刈り)と比較した。中苗は下刈り省略後も順調に成長し,6年目末の平均樹高が639 cmに達した。競合植生の平均高との差も拡大しており,本調査地では3年目以降の下刈りを省略できる可能性が極めて高いと考えられた。一方,毎年下刈りを行った裸普通苗の成長と比較すると,中苗は下刈り省略開始の翌年には樹高成長がやや低下し,2年後には直径成長が明瞭に抑制されており,樹冠下部への被圧の影響が示唆された。また下刈り省略に伴い競合植生が高木・小高木主体の種構成に変化していることから,成長に優れる系統のメリットを活かすためには,追加の下刈りや早期の除伐が必要となる可能性がある。