日本森林学会誌
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論文
人工林施業に伴うトドマツ人工林内下層植生現存量の変化
宇都木 玄飯田 滋生阿部 真田内 裕之
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2007 年 89 巻 3 号 p. 174-182

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抄録
長伐期施業等,人工林の高齢級化による下層植生現存量の変動を明らかにするために,施業履歴の明確なトドマツ林を21林分選択し,林内の下層植生現存量(樹高3 m以下)と光環境条件を調査した。下層植生直上の相対光強度(ISF)は5.2∼22.3%であり,ISFは上層林冠構成木の立木密度の逆数(Dsi)を用いて推定することができた。下層植生現存量は0.01∼4.3 Mg ha-1であり,また最大の葉面積指数(3.37 m2m-2)は落葉広葉樹林のそれに匹敵した。下層植生現存量は光環境条件,Dsiおよび除間伐作業後の経過年数に影響されていた。ISF 20%以下の下層植生地上部現存量は7 Mg ha-1に満たないと推定されたが,これは国内の既存の報告と一致した。このことは長期間施業が行われない場合でも下層植生現存量は上層林冠木現存量の0.01∼4.1%に過ぎず,下層植生の炭素貯留機能には大きな期待を持てないことが示唆された。しかしながら,既存の研究を概観すると,土砂流出防備等の水土保全機能に対しては十分に機能を発揮できると考えられた。
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© 2007 一般社団法人 日本森林学会
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