抄録
GCMによって予測された将来の降水量と蒸発散量を水文モデルに入力することにより,気候変動が淀川流域の洪水とダム貯水池管理に及ぼす影響を評価する.本論で実施する流出シミュレーションの特徴は,1)ダム群流況制御モデルを水文モデルに統合していること,2)約10 km2 の部分流域毎に降雨流出過程を集中化した物理分布型モデルを用いていること,3)予測された日降水量を時間降水量にダウンスケールして水文モデルに入力していることである.流出シミュレーションの結果,2031年から2050年には中規模の洪水頻度が増加する一方,2081年から2100年には低頻度で大規模な洪水の規模がより激化する可能性が示唆された.また桂川流域の日吉ダムでは2031年から2050年にただし書き操作の回数が増える予測結果となった.