2022 年 58 巻 6 号 p. 897-901
症例は8歳の女児.左鼠径部の膨隆を認め,当科紹介受診された.診察時に通常の鼠径ヘルニアに比べて,やや外側に背の低い膨隆を認めた.外鼠径ヘルニア以外の可能性を考慮し,正確な診断・治療が可能な腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると左膀胱上窩にヘルニア門を認め,外膀胱上窩ヘルニアと診断した.治療については小児例でありメッシュの使用は回避すべきと考え,ヘルニア門の縫縮および内側臍ヒダを用いた壁の補強を行った.これまで外膀胱上窩ヘルニアを認めた小児例の報告はなく,手術手技に工夫を要した.術後1年現在,再発を認めていないが,中長期的な再発の評価が課題である.