油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
脂質分解酵素の油脂汚れの洗浄への応用に関する研究(第3報)
トリオレイン及びその加水分解生成物の洗浄性
橋本 尊子藤井 富美子川瀬 徳三皆川 基
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1985 年 34 巻 8 号 p. 606-612

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抄録
脂質分解酵素リパーゼによるトリグリセリドの洗浄機構を明らかにするため,トリオレインとその加水分解生成物であるジオレイン,モノオレイン及びオレイン酸のそれぞれ単一及び混合汚れの綿布からの除去を,界面活性剤の種類及び洗液のpHを変えて調べた。また,位置特異性の異なる各種リパーゼを含む界面活性剤水溶液によりトリオレインを洗浄した。
非イオン界面活性剤,モノアルキル=デカ(オキシエチレン)エーテル(APE)では,トリオレイン及びその加水分解生成物のそれぞれ単一及び混合汚れはグリセリドの種類によらずすべて同じ程度で除去されたが,アニオン界面活性剤,硫酸ラウリル=ナトリウム(SDS)では,ジオレイン,モノオレインがトリオレインに優先して除去された。また,アルカリ水溶液では,オレイン酸はオレイン酸セッケンの生成により最も容易に除去され,それが共存する他のグリセリドの除去を促進した。
リパーゼを含むSDS水溶液によるトリオレインの除去において,pH 7.0では,トリグリセリドの加水分解反応系中にジ及びモノグリセリドを蓄積する位置特異性を有するリパーゼの方が,脂肪酸生成量の多い位置特異性を持たないリパーゼよりも効果的であった。リパーゼを含むAPE水溶液によるトリオレインの除去において,リパーゼの効果は位置特異性の有無による有意差はみられなかった。これらの結果は,界面活性剤によるトリオレインとその加水分解生成物の除去の結果とよい対応を示した。
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© 公益社団法人 日本油化学会
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