抄録
D-ribo-C18-フィトスフィンゴシン (Phyto) とアセトンから生ずるPhyto-アセトン付加物 (1) の構造を明らかにするため, その質量分析 (DI-MS, GC-MS) の研究を行った。Phyto-アセトン-h6付加物 (1-h6) のDI-MSで既に報告されているm/e=100,130,160以外に特徴的なフラグメントイオンとしてm/e=326,342が検出された。ピリジン中で付加物 (1-h6) とHMDS+TMCSとを反応させると2種類の化合物が生じ, それらの構造はGC-MS分析から2, 3-環状付加物の1, 4-bis-OTMS化合物 (III) と1, 2-及び2, 3-環状付加物がTMSにより開環した1, 3, 4-tris-OTMS化合物 (V) であることが確認された。また, GLCの経時変化から, (III) はさらにもう一分子のTMSと反応して (V) となることが認められた。 (III) と1, 2-付加物のTMS化合物 (IV) の立体構造を比較すると, (III) が立体障害が大きいためTMSによる開環反応が遅いことが示唆された。Phyto-アセトン-d6付加物 (1-d6) のDI-MSでは, EI (電子衝撃) 反応のため, アセトン-d6に起因する質量増加よりも1~2質量数の大きいフラグメントイオンが検出された。以上の結果から, (1) の構造として既に報告されている1, 2-環状付加物 (I) 以外に2, 3-環状付加物 (II) が存在すると結論できた。