日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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界面活性剤の化学構造と機能の相関に関する研究
石上 裕
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1996 年 45 巻 3 号 p. 229-242

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抄録

高分子界面活性剤は, 高分子電解質の伸びた高分子鎖の収縮挙動によって区別される。オリゴマー型界面活性剤 (オリゴソープ) は質量作用則に従い, ミセル形成に対応して臨界ミセル濃度 (cmc) を有していた。オリゴソープの繰り返し単位当りの部分モル容積が, HLB 値とともに実際の可溶化および乳化作用の大きさと関係づけられた。バイオサーファクタントは, かさ高い構造にもかかわらず小さい cmc と高い表 (界) 面張力低下作用を示した。このような機能は界面での優れた分子配向性に帰せられよう。この挙動はべシクル形成および分子集合系のミセルー脂質粒子-ラメラ-ベシクルヘの変換を見出すことによって確かあられたといえよう。さらに, サーファクチンの棒状ミセル形成は, このように高度に組織化された集合体を形成するのに有効な分子の積み重なりを可能にするためにβ-シートの形成が重要であることが示唆された。バイオサーファクタントは, スピクリスポール酸におけるゲル形成性の乳化・分散, コリノミコール酸とラムノリピッドにおける浸透作用, サクシノイルトレハロースリピッドにおける多点吸着によるエマルションの安定化作用, ラムノリピッド同族体における強い界面活性などの特長を示した。最後に, バイオミメチク・サーファクタントの調整と応用は, 生体中に含まれる両親媒物質の化学構造や生物機能を模倣して, 生物科学への貢献やスペシァリティケミカルズの開発に有用であると結論された。

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