ビタミンE輸送タンパク質と先天性ビタミンE欠乏症

抄録

ビタミンE (α-tocopberol) は生体膜を酸素ストレスから防御する脂溶性の抗酸化物質である。天然には8種類のビタミンE同族体が存在し, 哺乳動物はこれらを食餌から摂取しているが, 動物体内にはα-tocopherolのみが蓄積している。摂取されたビタミンEの体内動態が調べられた結果, α-tocopherolを選択的に保持する機能は肝臓にあることが分かったが, こうした現象の分子レベルでのメカニズムは全く解明されていなかった。我々はα-tocopherolと特異的に結合する蛋白質 (α-tocopherol transfer protein, α TTP) をラット肝臓サイトゾール中に見いだし, その精製, 遺伝子クローニングに成功した。さらに最近, α TTPが先天性ビタミンE欠乏症の原因遺伝子であることを証明した。こうした発見により, α TTPがビタミンE同族体の識別や, 血液中のビタミンE濃度の決定などを司る重要な因子であることが明らかになった。