日本油化学会誌
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水溶性および脂溶性のラジカル開始剤によるヒト血しょうの酸化
山本 順寛永田 祐一郎
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1996 年 45 巻 5 号 p. 445-452

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抄録

空気下37℃での水溶性および脂溶性のラジカル開始剤によるヒト血しょうの酸化におけるボスファチジルコリンヒドロペルオキシド (PC-OOH), ボスファチジルコリンヒドロキシド (PC-OH), コレステロールエステルヒドロペルオキシド (CE-OOH), コレステロールエステルヒドロキシド (CE-OH), 遊離脂肪酸ヒドロペルオキシド (FFA-OOH), 遊離脂肪酸ヒドロキシド (FFA-OH) の生成および尿酸, アスコルビン酸, ビリルビン, ユビキノールー10, α-トコフェロールなどの酸化防止剤の変化を測定した。
水溶性開始剤による迅速なアスコルビン酸の減少と脂溶性開始剤による迅速なユビキノール-10とα-トコフェロールの減少は, 水溶性開始剤が水相で, 一方脂溶性開始剤は脂質相で作用していることを示唆する。
血しょうの酸化によりPC-OOHとCE-OOHに加えて相当量のPC-OHが生成した。PC-OOHを血しょうに加えるとPC-OHが主として生成することから, PC-OHはペルオキシダーゼにより生成したと考えられる。
血しょうの酸化により相当量のCE-OHも生成した。血しょう中でCE-OOHが比較的安定であることから, CE-OHはレシチン : コレステロールアシルトランスフェラーゼの作用によりPC-OHから生成したと考えられる。
FFA-OOHとFFA-OHがほとんど生成しなかったことからホスホリパーゼA2および血小板活性化因子加水分解酵素はPC-OOHとPC-OHの分解にさほど重要ではないと考えられる。
血しょうの酸化における2種類の開始剤の違い, 高密度および低密度リポタンパク質の酸化の違いについても議論した。

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