抄録
ヒト前骨髄性白血病細胞 (HL-60細胞) の分化と増殖に及ぼすドコサヘキサエン酸 (DHA) 結合型リン脂質の影響について検討した。分化誘導剤であるレチノイン酸 (RA) の単独添加に比べ, DHA結合型ホスファチジルコリンでインキュベーションした後にRAを添加することで分化率が有意に上昇した。このようなRAの分化誘導能に対する促進効果は, sn-1位がパルミチン酸又はオレイン酸, sn-2位がDHAである分子種において顕著であった。同一分子種のホスファチジルエタノールアミン (PE) の添加では, ホスファチジルコリンに比べより大きな分化誘導促進効果がみられ, DHA結合型PEのみを単独添加した場合においても, 強い細胞増殖抑制作用とNBT還元能の上昇がみられた。以上の結果より, HL-60細胞の分化誘導および増殖抑制に対して, 1-palmitoyl又は1-oleoyl-2-docosahexaenoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamineが最も効果的であった。