日本油化学会誌
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古細菌エーテル脂質の多様性と系統関係
古賀 洋介
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1997 年 46 巻 5 号 p. 485-495,596

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抄録

エーテル脂質は古細菌と真正細菌を区別する最も明確な指標のひとつである。古細菌の中では, コア脂質の構造, リン酸含有極性頭部基, 糖脂質の糖残基の種類に多様性が認められる。例えば, 非メタン生成好熱菌は主にテトラエーテル型のコア脂質を含み, リン酸含有極性基としてはイノシトールだけを持っており, 高度好塩菌の脂質はジエーテル型のコア脂質と極性頭部基としてはグリセロリン酸およびその誘導体のみから成っている。メタン菌の脂質はこれまで分析された限りではすべて極性基として窒素原子含有基を持っている。このような古細菌の脂質の多様性はランダムなものではなく, 系統関係によって決定されているので, 定性的な脂質組成は高度好塩基やメタン菌で化学分類学的マーカーとして用いられている。生物の世界の最高階級である二つのドメインである古細菌と真正細菌を分ける最も基本的な表現形質は極性脂質のグリセロリン酸骨格の対掌体構造である。この相違はこの二つのドメインが分化した時点以来ずっと保たれていたと仮定することができる。

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