日本油化学会誌
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好熱性古細菌のエーテル脂質
須貝 昭彦
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1997 年 46 巻 5 号 p. 497-505,596

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抄録

常温で生育する古細菌の脂質は, 基本的にはグリセリンのsn-2とsn-3にC20のフィタノールがエーテル結合したarchaeolであるが, 高温下で生育する菌株では, 2分子のarchaeolが炭化水素同士を向き合い, 炭化水素鎖のメチル末端が結合した構造のcaldarchaeolを基本構造とするものが多い。好熱性古細菌は, 強酸性下に生息するものと, 中性付近に生息しているものとに分けることができるが, 強酸性下で生育するものでは, 全てテトラエーテル型脂質を主要とするものからなっている。これに対し, 中性で生育するものでは, テトラエーテル型脂質を主要なものとするものの他に, ジエーテル型脂質を主要脂質とする菌株も検出されている。特に強酸性高温下に生育するSulfolobaceae科に属する菌株の主要脂質は, caldarchaeolの片側のグリセリンがカルジトールと置き換わったcalditocaldarchaeolを脂質骨格としており, この特殊な構造が耐酸耐熱性に寄与している可能性が考えられる。また, 好熱性古細菌の脂質におけるリンを含む極性頭部は, イノシトールリン酸などの負電荷のものからなっている。

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