日本油化学会誌
Online ISSN : 1884-1996
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超好熱菌の耐熱性酵素
今中 忠行藤原 伸介
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1997 年 46 巻 5 号 p. 525-533,597

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抄録

16S rRNAの配列を用いた系統解析によれば生物界は細菌, 真核生物, 始原菌の3つのドメインに分類されており, なかでも超好熱始原菌は真核生物の起源に最も近いと考えられている。そのため, 単に耐熱性酵素の生産菌としてだけではなく, 生命誕生の謎を解く鍵としても脚光を浴びている。超好熱始原菌が生産する酵素のアミノ酸配列は一般的に真核生物のそれに似ているが, 触媒機構には特殊性を示すものもある。我々は鹿児島県小宝島の硫気孔から95℃を生育最適温度とする超好熱始原菌Pyrococcus sp.KOD1株を単離し, その酵素の性質を研究することで多くの興味深い知見を得ることができた。ここでは超好熱菌研究の背景とそれが作り出す酵素の性質についてプロテアーゼ, アミラーゼ, DNAポリメラーゼ, グルタミン酸合成酵素, Recタンパク質, アスパラギン酸tRNA合成酵素, 分子シャペロニンを中心に述べる。また, KOD1株のDNAポリメラーゼを用いた短時間PCR, KOD1のシャペロニンを用いた酵素の安定化及び不溶性顆粒の可溶化について紹介する。

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