抄録
油脂の摂取は健康維持のために重要であるが, 油脂中の構成脂肪酸により, 油脂の栄養学的機能は異なる。このためバランス良い摂取が望まれ, 日本人の栄養所要量では脂肪の量のみならず脂肪酸の質についても望ましい摂取比率が推奨されている。
健康維持のための至適な油脂摂取量を考えるために, 日本人の今までの脂肪摂取量や栄養所要量を検討し, 脂肪酸摂取量や脂肪酸摂取比率を算出した。
1946年の脂肪摂取量は14.7g, 脂肪エネルギー比は7.0%であったが, 1997年には脂肪摂取量は59.3g, 油脂類の摂取量は17.0gであった。これらの脂肪摂取量の増加は植物油のみならず動物性脂肪の著しい増加に依るものであった。
脂肪や脂肪酸摂取量と疾病との関連を検討したところ, それぞれある摂取レベルを越えると各種疾病による死亡率が急上昇することが明らかで, これが至適摂取量の上限の一つの目安を示唆するものと考えられた。