抄録
ブタ膵臓カルボキシルエステルリパーゼ (コレステロールエステラーゼ, CEL) を精製し, 水溶液中で, エステル合成反応を測定した。CELはコレステロールエステル, グリセロールエステル, リゾリン脂質, ビタミンエステルおよび水溶性エステルなどを分解しbroadな基質特異性を持っている。CELはbroadな基質特異性を持ってエステル合成反応を行った。コレステロール, 脂肪族アルコール, レチノール及びモノアシルグリセロールなど種々のアルコール類にアシル基を転移し, それぞれの脂肪酸エステルを合成した。その反応機構は, CELが脂肪酸あるいはトリアシルグリゼロールと共存すると, アシル一酵素中間体が形成される。この中間体が水により, 求核攻撃を受ければ加水分解反応が起こり, 脂肪酸が遊離する。この中間体が種々のアルコールにより, 求核攻撃を受け, 脱アシル化されれば, エステル合成反応となり, 脂肪酸エステルが合成される。リパーゼの反応の場である脂質界面では, 水溶液中にも拘わらずエステル合成反応が分解反応より効率よく起こっている。この様に, broadな基質特異性を持ち, 脂肪酸エステルの分解, 合成反応を行うCELは, “nonspecific acyltransferase” と呼ぶべきである。