2020 年 11 巻 1 号 p. 64-67
87歳男性。体動困難を主訴に当院へ救急搬送となった。迅速抗原検査でA型インフルエンザと診断され,精査加療目的で入院となった。第2病日の血液検査で血清CK値は7,542U/Lから96,700U/Lへ,Cr値は1.07mg/dLから2.5mg/dLへと上昇しており横紋筋融解症による急性腎障害と考えられた。MRI検査では体幹や大腿筋に脂肪抑制T2強調画像で高信号域が認められ,筋力低下部位と合致していたため横紋筋融解症による体動困難であったと考えられた。その後乏尿となり,第4病日にはCr値6.8mg/dLまで上昇したため血液透析を開始した。第25病日頃から尿量は増加傾向となり,体動困難は徐々に軽快した。第32病日に血液透析から離脱し,その後も腎機能障害は改善し第50病日に退院となった。インフルエンザウィルス感染症に横紋筋融解症が合併することが知られているが,血液透析を要するほど重症の急性腎障害を生じることはまれである。文献的考察を加えて報告する。