2024 年 5 巻 1 号 p. 282-290
社会福祉施設における事業継続計画(BCP)の策定に際し,職員参集の基準を明確に定めることは,利用者および職員の安全を確保する上で重要である.しかし,従来のハザードマップを使用して,災害時の具体的なシナリオを時系列的に想像し,計画を策定することは困難である.本研究では,河川の氾濫による浸水を想定し,BCP策定のための群衆シミュレーションを実施した.本シミュレーションにより,各地域に居住する職員が,安全に施設へ移動できる時間帯や経路を把握することが可能となった.これにより,BCP策定,特に職員参集の最適なタイミングや方法をより具体的に計画するための新たなアプローチとしての可能性が示唆された.今後,社会福祉施設において,本研究成果を活用したBCP 策定に関するワークショップを実施し,その有用性を評価する.