AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
最新号
選択された号の論文の32件中1~32を表示しています
  • 山本 耀平, 橋本 岳, 菊池 康平, 東 勇作, 橋本 智洋, 山本 茂広, 井澤 大介, 中嶋 規人, 高野 隼行, 阿部 雅人, 杉崎 ...
    2024 年 5 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    現在,日本全国で問題となっているコンクリート構造物の老朽化に対する対応策の1つとして,深層学習によるひび割れの自動検出が研究されている.また,点検作業を補助することを目的として,ひび割れの損傷度合を計測するために幅推定に関する研究も行われている.本研究では,深層学習から得られるひび割れの確率マップを用いて,より高精度な幅推定と推定した幅に対応した信頼度の算出を行った.評価用の画像17枚で推定した幅の正解幅との誤差の統計から信頼度と推定した幅の誤差の関係性を示し,妥当であることを確認した.

  • 田村 泰史, 諏訪 博彦, 岡本 賢治, 中矢 大輝, 高橋 めぐみ, 渡辺 隆司
    2024 年 5 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    土木施工現場へのDX推進として,新技術の複合的かつ多様化への活用が進められている.その結果,業務プロセスの変革と建設生産プロセスの最適化により,人材不足やインフラ財産のアセットマネジメントへの課題解決とともに持続可能な生産性向上の確保を目指すところである.しかし,それらの新技術導入の対策だけでは人的エラーの発生やレガシーシステムからの移行の停滞などの新しい課題が露見されつつある.その対策として,熟練者のスキルと新技術の融合がカギとなる.特に熟練者の意思決定をデータ活用によりモデル化させることが効果的であると筆者は考えている.本稿では,推進工事での意思決定の実例をもとに,施工現場の視点よりデジタルツインの運用とモデルの実装ついて提案する.

  • 山崎 文敬, 前田 幸祐, 柿市 拓巳
    2024 年 5 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    高齢化や労働人口の減少に伴う人材不足など,インフラ業界における様々な問題を昨今の DX 技術により解決していくことは喫緊の課題である.特にレーザスキャナや点群解析技術は目覚ましい進化をしてきており,周辺環境を高精度に短時間で点群化し目的の数値を自動で算出することが出来るようになってきている.本稿では橋梁コンクリート床版の平坦性検査に着目し,従来は膨大な測定点で行う床版高さ測定業務を,地上型レーザスキャナとInfracapture による自動点群解析技術により瞬時に算出する技術を開発した.さらに開発したシステムを従来手法と比較し精度および検査時間について評価を行った.その結果,精度は担保しつつ測定時間を 88%削減することに成功し,肉体的な負担軽減を含めた省力化にも大きく貢献できることが分かった.

  • 吉田 将規, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2024 年 5 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,道路情報収集業務の補助を目的として,通報音声から道路に関する事象が発生している地点を予測する手法を提案する.通報への対応を行うオペレータは,通報者から口頭で伝達される情報と管理地域の地理情報を照らし合わせることで,事象の発生地点を特定することが求められる.本業務の補助として,通報音声から地点の特定を行う手法を構築することで,オペレータの負担軽減および業務効率改善が期待される.本研究では,テキストに関する大規模な事前知識を持つ音声認識モデルや対話型の大規模言語モデルを用いることで,通報音声の認識およびテキストからの場所情報抽出を行い,地図アプリケーションでの地点予測を可能とする.また,実際の業務において取得された通報音声を用いた実験を行うことで,提案手法の有効性の検証を行うとともに,本研究における課題を明らかにする.

  • 渡邉 諭, 赤塚 洋介, 高柳 剛, 吉田 郁政, 五艘 隆志
    2024 年 5 巻 1 号 p. 43-55
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄道の安全・安定輸送の脅威となる洗掘災害に対する維持管理の品質向上のためには,鉄道の河川橋梁の橋脚で生じる局所洗掘に対する発生危険度を評価し,被災の可能性が高い河川橋脚を抽出する必要がある.そこで,過去に鉄道で発生した洗掘被災事例ならびに無被災事例に対し,河川特性や橋梁・橋脚の構造に関する条件を収集・整理したデータベースを構築した.また,そのデータベースに対して機械学習モデルの一つである決定木アルゴリズムにより被災・無被災を判定する学習モデルの構築を試みた.学習モデルから得られる予測結果と既往の洗掘採点表による判別結果を比較し機械学習モデルの有用性を示した.

  • 田中 博文, 趙 博宇, 蘇 迪, 長山 智則
    2024 年 5 巻 1 号 p. 56-65
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    少子高齢化やコロナ禍の影響を受け,鉄道事業者各社は厳しい経営状況にあるが,列車を安全・安定に運行するため,鉄道施設・鉄道車両等を適切に検査し,維持管理を行う必要がある.本研究では,地域鉄道事業者でも導入可能な低コストな軌道状態管理手法として,携帯情報端末を活用した車上からの線路巡視(列車巡視)支援方法の実用化を目指し,鉄道構造物等維持管理標準(軌道編)に定められている列車動揺や線路異常の有無などを把握するという要件に基づき,列車巡視支援アプリケーションを開発した.次に,開発したアプリケーションを用いて,複数の営業線で試験計測を実施し,得られた加速度や前方動画などの計測データの活用方法について多角的に検討した.その結果,加速度は列車動揺管理に,前方動画は机上での軌道状態等の把握に有効な見込みを得た.

  • 緒方 陸, 大久保 順一, 藤井 純一郎, 天方 匡純
    2024 年 5 巻 1 号 p. 66-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    デジタルツインにおける実空間と仮想空間の密接度を高めるインターフェースの1つとして自然言語処理技術への期待は大きく,土木分野でも実用へ向けた検討がなされている.この技術が充分に機能するためには,文脈を考慮した土木専門用語の言語モデルによる理解が必要であり,その適切な評価が求められる.しかし,既往研究はいかに土木分野へ適応させるかに焦点を当てた研究が多く,言語モデルの文章生成能力の評価には重きが置かれていない.そこで本研究では,土木分野における言語モデルの性能評価のため,評価指標の確立を目指す.その初めのステップとして新たに評価用データセットを作成し,既存指標のうちどの指標が土木分野において適切な評価が可能かを比較した.また,最後に自動評価指標を検討する上での課題について論じた.

  • 山脇 正嗣, 宇都宮 優喬, 平松 佑一, 木村 拓憲, 早見 俊紀
    2024 年 5 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,国内ではウォーカブルな街路空間の形成に向けた取組が進んでいる.その取組では,街路空間の利用者の行動について,調査・把握することが重要となる.しかし,それらの作業を人力で実施することは,時間・コストの両面で負担が大きい.そこで本研究では,作業の効率化を目的とし,AI技術の一種である深層学習(Deep Learning)による,人間の行動検知技術の研究開発を進めている.本稿では,街路空間を撮影したカメラ画像を対象に,国土交通省が規定するガイドラインに記載の各種行動を検知するモデルを開発し,実街路空間の利用状況を定量的に把握できることを示した.

  • 原田 紹臣, 山田 菊子, 武井 千雅子, 貝戸 清之
    2024 年 5 巻 1 号 p. 84-100
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    良好な都市景観を形成する際,一般的に,住民が望む都市機能などを反映させた国土や都市の形成が重 要であると考えられる.このような中,2023 年 7 月に第三次の国土形成計画(全国計画)が閣議決定され,今後,この計画を踏まえた各地域における地方計画等の都市計画の見直しが求められている.そこで,本研究では,人間中心設計の観点から住民の意見や要望に配慮した国土形成に向けて,社会資本に関する既往の国民アンケート調査結果を対象に,一般的に客観性や再現性において期待されている近年の AI 技術 等を用いて検討し,これらの適用性について考察した.なお,大都市や地方都市の今後における目指すべき景観検討に関して,大規模言語モデルや画像生成等の AI 活用の新たな可能性や今後の課題について,従来までの定量的評価手法(多変量解析)の検討結果との比較や,新たに実施したアンケート調査結果での検証により考察した.

  • 清野 竜生, 斉藤 直輝, 前田 圭介, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2024 年 5 巻 1 号 p. 101-109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    インフラ設備の正確かつ効率的な維持管理業務を遂行するためには,熟練技術者が有する優れた点検技術(熟練技術)を若手技術者へ継承する必要がある.多くの時間と労力を要する熟練技術の継承を支援するためには,点検に重要な動作を明確にする必要がある.しかしながら,従来の研究では,視線・動作などの生体情報を用いた熟練度分類と点検技術の熟練度と生体情報間の関連性分析に留まっている.そこで本論文では,若手技術者への技術継承支援に向け,熟練度分類および分類に重要な要素を可視化する手法を提案する.提案手法では,点検中の技術者から得られたモーションデータを用いて,熟練度分類の確信度を考慮することで重要な要素を強調するAttention機構を導入したグラフ畳み込みネットワークにより,説明可能な熟練度分類を実現する.

  • 大羽賀 駿也, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2024 年 5 巻 1 号 p. 110-116
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,工事現場における事故による労働災害の防止を目的として,工事現場の定点カメラを用いた物体検出および姿勢推定に基づくZero-shot高リスク状況検出手法を提案する.提案手法では事前学習済みの物体検出モデルと姿勢推定モデルを用いて,車両と人の検出および姿勢推定を行い,誘導員が車両を認識していない状況と,誘導員が車道に出ている状況の2つの高リスク状況の検出を実現する.提案手法により検出した高リスク状況について,発生時間帯や頻度等の統計的情報を作業者や管理者に提供することで安全意識の向上が期待される.本文の最後では,工事現場出入口で実際に撮影された動画を用いた実験を行うことにより,Zero-shot高リスク状況検出手法の有効性を検証する.

  • 五箇 亮太, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2024 年 5 巻 1 号 p. 117-125
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,建設現場における安全管理の支援を目的として,重機との接触事故リスクを推定する手法を提案する.労働災害に関する近年の状況から,建設業においては発生件数が多く,増加傾向にある重機と作業員との接触事故の防止は喫緊の課題である.提案手法では,重機取り付けカメラまたは建設現場の定点カメラより撮影された映像を用いて,重機との接触事故リスクを推定可能とする深層学習モデルを構築する.ここで,提案手法では,再帰型ニューラルネットワークに Spatial-temporal attention を導入することで,検出物体やフレームごとの重要度を考慮した時系列解析を可能とし,高精度な接触事故リスクの推定を実現する.本稿の最後では,実際の建設現場で撮影された映像を用いた実験により,提案手法の有効性を確認する.

  • 藤原 圭哉, 佐藤 誠, 山下 千智, 黒田 直樹, 亀田 敏弘
    2024 年 5 巻 1 号 p. 126-133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    仮想空間上に実現象を再現するデジタルツイン技術が土木工学の各分野で重要となっている.特に長大な自然公物である河川の将来予測においては,自動処理できる情報の多寡が技術者減少の中でも持続可能なインフラメンテナンスを実現するうえで重要である.本稿では,河道内の中長期的なモニタリングや動向予測に用いられる河床変動解析を一例に,デジタルツインの実現に向けて開発したモジュールの実証を実施した.実現場の適用例として,3D地形データを含む釜無川の各種河川データを活用して自動取得・変換・分析・配信のモジュールを実証した.モジュールは技術の進歩に応じてカスタマイズ,入れ替えても動作可能なものであり,将来にわたってデータ処理の自動化に寄与することが特徴である.

  • 堀田 海陽, 吉田 郁政, 大竹 雄, 高野 大樹
    2024 年 5 巻 1 号 p. 134-141
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    計測技術の向上により大規模データが得られるようになり,これを活用したデジタルツインの考え方が注目されている.デジタルツインではデータサイエンス技術が重要であり,近年データ駆動的アプローチの一つであるDynamic Mode Decomposition with Control (DMDc)が注目されている.これまでに著者らは埋め立て地や軟弱地盤における沈下量の将来予測におけるDMDcの適用性について検討した.本研究では,これを発展させ,DMDcにRobbins-Monro algorithmの定式化を導入したKalman Filterを適用した沈下量予測を実施した.学習区間以降の予測区間において一部の観測点で観測情報が得られている場合の予測精度向上の可能性を示し,またDMDcでは評価できなかった予測沈下量の不確定性の定量化の例を示した.

  • 白旗 弘実, 田井 政行, 河合 孝純, 青木 工, 原 廣敬, 髙木 千太郎
    2024 年 5 巻 1 号 p. 142-150
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    道路構造物の定期点検が行われるようになった.追跡性のある点検データ管理が重要になってきているが,デジタルトランスフォーメーションの活用が必要不可欠である.著者らは3Dモデルを使用したデジタル野帳を開発してきたが,今後の構造物モニタリングも統合したマネジメントシステム構築のために,力学的応答を再現し,劣化進行などをシミュレートできるデジタルツイン作成に取り組んでいる.供用している橋を選定し,有限要素解析モデルを作成した.現場載荷試験を行い,解析値と実測値を比較し,実挙動に近くなるように改良を加えた.その結果,主たる構造部材だけではなく附属物のモデル化が重要であることが示された.現場載荷車両でなくても大型車の通行時で予想されるひずみ値とも整合性があることも確認することができた.今後は構造物の弱点部の抽出などで力学モデルを活用していく.

  • 梅原 喜政, 塚田 義典, 田中 成典, 上月 康則, 下鳴 恒彰, 平野 順俊, 大上 航平, 寺田 駿太
    2024 年 5 巻 1 号 p. 151-158
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    法務省は,土地の位置や筆界を明らかにするため,登記所備付地図作成事業を平成27年度より推進している.令和5年1月には,全国の登記所備付地図データがG空間情報センターから無償で公開された.しかし,任意座標系に基づくデータが多いため,多用途展開や利活用の推進の阻害要因になっている.そこで,本研究では,属性情報によるジオコーディング手法や道路線形による位置合わせ手法を考案し,任意座標系の登記所備付地図データを公共座標系に自動変換する技術を開発した.そして,変換後の登記所備付地図データの活用事例の一つとして,ブロック塀の所有者推定手法を提案し,実証実験を通じて有用性を確認した.

  • 山本 忍, 今井 龍一, 中村 健二, 塚田 義典, 麻生 紀子
    2024 年 5 巻 1 号 p. 159-171
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    レーザ計測機器の活用に伴い,国土空間の点群が計測・蓄積されている.レーザ計測の成果である点群は,位置座標を保持した点の集合体のため,用途展開を図るには空間処理しやすいデータセットに加工する必要がある.この一方策として,著者らは点群のプロダクトモデル化に取り組んでおり,道路図面や自動運転用の道路地図(HDマップ)を基に生成した地物の領域データと地物単位の点群を用いて,地物識別モデルを構築した.一方,図面や地図がない区間では,プロダクトモデル化に必要な領域データが生成できないことが課題としてあげられていた.

    本研究では,地物識別モデルを用いて,地物の領域データを自動生成する手法を考案した.その結果,HDマップや提案手法の領域データを比較し,地物の点群から領域データを自動生成できることを明らかにした.

  • 中川 佳大, 亀田 敏弘
    2024 年 5 巻 1 号 p. 172-177
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    Society5.0の目標の一つのスマートシティ化に向けて,都市OSを用いてデータの連携・利活用をより効率的に行うために広域化とサービス連携を検討した.都市 OS は広く使われている FIWARE を使用した.広域化には LPWA(Low Power Wide Area)の1つである LoRaWAN を使用した.サービス連携の例として LoRaWAN の Network である The Things Network を使用した.それらと別のサービス連携の例として国土交通データプラットフォームの場合と比較,検討した.課題としてデータ構造の柔軟な変換方法や共通化やデータベースの配置をサービスへのアクセス頻度によって設計する必要がある.

  • 栗原 祐哉, 亀田 敏弘
    2024 年 5 巻 1 号 p. 178-183
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタルツインを構築するために,LoRaWANを使用してTTNサービスに都市環境データを集約,さらにGraphQLとREST APIを使用して配信するマイクロサービスを考案した.LoRaWANとTTNを使用することでセンサネットワークを簡単に構築することができる.さらに,配信方法として現在主流となっているREST APIに加えて国土交通データプラットフォームで採用されたGraphQLを使用することで,ユーザがより簡単に都市環境データにアクセスできるようになる.GraphQLは取得するデータをユーザが指定して柔軟に整形することが出来るという利点があり,クライアントの実装の幅が広がると考えられる.このシステムを実際に構築して検証を行い,実現可能であることを示すと同時に問題点を明らかにした.

  • 山本 竜一, 平野 大希, 水口 知樹
    2024 年 5 巻 1 号 p. 184-190
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    鋼橋の保全工事では,腐食や疲労による性能低下,あるいは最新の基準による要求性能を満足しないことに対する補修・補強が行われる.補修・補強は,既設部材に当て板等の新規部材の追加,あるいは部材の交換が行われることが多い.その際,既設部材の計測による詳細な形状,寸法の把握とともに,十分な知識及び経験に基づいた構造と施工方法に関する三次元的な検討が必要となる.従来の二次元の図面と現実の既設部材の組み合わせによる検討から,生産性向上を目指して理解が容易な三次元のAR技術に着目し,現場で既設部材を直接目の前にして新規部材の設置状況について三次元で実スケールを体感しながら事前に確認する手法を実務に取り込む検討を行った.その結果,事前確認に十分な精度で実施できることを明らかにした.

  • 林 亮佑, 八木 雅大, 高橋 翔, 萩原 亨, 松本 一城
    2024 年 5 巻 1 号 p. 191-203
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    積雪寒冷地の冬期道路環境では,路面凍結や視程障害,堆雪による狭窄など,厳しい条件下での走行を余儀なくされる.これに対して,事故リスクの高い経路を回避する判断を促すため,道路利用者への情報提示が行われている.現状の情報提示は,道路画像や積雪量,視界情報など,道路に着目した内容に焦点を当てている.本稿では,道路に着目した情報ではなく運転挙動,具体的には自動車の走行位置に着目する.運転挙動の変化を強いられる環境はストレスが高く,危険な環境と考えられる.走行位置の変化が起こっている箇所を地図上に可視化し,道路利用者へ提示することは,より安全な経路選択の一助となると考えられる.そこで,本稿では,GNSSデータから走行位置の変化を可視化する手法を提案し,実験により提案手法によって走行位置の変化が可視化できるかを確認する.

  • 繁澤 朗, 八木 雅大, 高橋 翔, 萩原 亨
    2024 年 5 巻 1 号 p. 204-211
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    道路空間をデジタルツインに再現し分析を行うために交通参加者の位置を観測する手法として,道路を 撮影した映像に対して一般物体認識を適用することが挙げられる.しかし,道路映像において小さく撮像されやすい二輪車の認識精度に課題がある.そこで本稿では,道路映像全体に対して一般物体認識と姿勢推定を適用し,二輪車そのものに加え,二輪車を運転する人間の姿勢にも着目した識別を行う手法を提案する.提案手法ではまず,道路映像に対して一般物体認識と姿勢推定を適用する.次に姿勢推定から得られた姿勢データを追跡する.ゴーストを除去したうえで,全身運動を表現する特徴ベクトルを入力とする OCSVM を構築することで,歩行者と二輪車運転者を分類する.次に,抽出された二輪車運転者について,ペダリング動作の有無を表現する特徴ベクトルを入力とするSVMによって自転車,バイクに識別する.この姿勢推定に基づく識別結果を一般物体認識の識別結果と統合することで,一般物体認識で認識できなかった二輪車を識別することが可能となり,精度向上が期待できる.本稿の最後では,実際の道路映像を用いた実験によって,提案手法の有効性を確認する.

  • 向井 智洋, 八木 雅大, 髙橋 翔, 萩原 亨
    2024 年 5 巻 1 号 p. 212-221
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    各種センサによって得られるデータを用いたAIによる空間分析が行われている.AIによる空間分析の効果を最大にするには,複数センサの配置や設置角度,数量などを事前に見積もる必要がある.この方法として,従来手法では,物体検出結果に基づく評価関数を用いた反復深化探索によりカメラ配置条件を探索した.しかし,探索領域が限定されるため,局所最適解に陥る場合があることが課題であった.そこで本稿では,遺伝的アルゴリズムに基づくカメラ配置条件の探索手法を提案する.具体的には,従来手法で得られた解を初期解とし,選択,交叉,および突然変異を繰り返し,カメラ配置条件の探索を行う.これによって,従来手法に比して探索領域が広く,局所最適解に陥りにくい手法を実現する.本論文では実験により,提案手法の有効性を確認する.

  • 高橋 悠太
    2024 年 5 巻 1 号 p. 222-229
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    Digital Twinにおいて,物理空間と仮想空間はセンサー等で得られたデータにより接続される.データはセンサー以外にも,人による場合もある.人の手を介したことにより処理前後で異なる結果となったデータを,人手による多重確認により検知することは現実的でない.本研究では大規模言語モデルを用いたチャットボットであるChatGPTを用いてこのような不一致データを検知可能か検証する.実験にはxROADの道路橋データのうち,地方自治体のデータを使用した.実験結果により,ChatGPTによって公開用API から得られたデータと点検調書との不一致箇所をNo Codeで検知できる可能性が明らかになった.

  • 富田 紀子, 西山 哲, 間野 耕司
    2024 年 5 巻 1 号 p. 230-238
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    水中を透過するグリーンレーザ光を照射するスキャナを搭載したドローンが実用化され,3次元データを使った河川管理の効率化・高度化のための利用が期待されている.本研究は,河川管理項目の中の「被災箇所調査」あるいは「災害復旧」に着目し,ドローンを使った測量の有効な利用法を検討するものである.具体的には,調整点無しで実施した際の位置精度を検証し,さらに出水前後で取得した測量データから変状発生個所を迅速に検出し,さらにその変状の大きさを定量化するアルゴリズムの開発を試みた.本論文では,これら災害地対応に要求される位置精度を満たすドローン測量の研究開発成果を報告する.

  • 米山 睦美, 髙見澤 拓哉, 眞部 達也, 田尻 大介
    2024 年 5 巻 1 号 p. 239-244
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄筋コンクリート構造物の配筋検査の効率化を目的に,スラブ状の鉄筋を自動で走行する鉄筋結束マシンに取り付けたカメラで撮影した動画からSfM,MVSにより生成した点群から得られた鉄筋モデルを用いて,配筋ピッチ等の確認への有効性を検証した.スラブ上を規則的に移動しながら多視点での動画を撮影可能なため,上段の鉄筋の背面となる下段の鉄筋や鉛直方向に配置されたスターラップの鉄筋の点群も効率的に取得することができた.また,得られた点群から生成した円筒状の鉄筋モデルにより対象範囲のすべての鉄筋間隔を計測することができた.

  • 染谷 萌, 亀田 敏弘, 中瀬 仁
    2024 年 5 巻 1 号 p. 245-252
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,極端な気象現象の増加により,熱中症リスクが高まるなどの深刻な社会問題が発生している.その対策として,スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を用いて,温度や湿度等の環境を再現する「暑熱シミュレーション」を実現が進められている.都市スケールでの暑熱環境予測が求められているため,データ同化により高い精度を担保する必要がある.そこで本研究では,シミュレーションの精度を高め,データ同化により都市のデジタルツインを実現するため,フィジカル空間からの実測データを同化するセンサネットワークシステムを構築した.大阪万博の会場である夢洲において実証実験を行った結果,センサと通信が正常に動作し,デジタルツインの構築に寄与できることが確認された.

  • 岩本 拓己, 重松 康祐
    2024 年 5 巻 1 号 p. 253-259
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,遠隔操縦による油圧ショベルの安全性向上を目的とした,新たな転倒予測システムについて報告する.災害復旧現場では遠隔操縦の油圧ショベルが投入されることがあるが,その作業は転倒等の危険と隣り合わせである.転倒を防ぐには,事前に転倒の危険性を予測し,危険を回避する方法が有効である.既存の物理モデルに基づく予測方法は,外乱や車両の動きを考慮しておらず,また予測にかかる時間が課題となっていた.本研究では,DNN(Deep Neural Network)を用いて,油圧ショベルの現在から 1秒後までの最大の傾斜角を高速に予測する,新しいシステムを提案する.このシステムは,複雑な物理モデルの解析を必要とせず,センサデータと将来の機体傾斜角の関係を直接学習して予測を行う.さらに, 3 次元点群を鳥観図に変換し,CNN(Convolutional Neural Network)に入力することで,高速な予測を目指す.シミュレーションによる検証では,予測誤差は 0.056rad,予測時間は約 2.79msであり,高い性能を示した.しかし,これらの結果はシミュレーションに基づくものであり,実機での検証が今後の課題である.本研究により,遠隔操縦による油圧ショベルの安全性が向上することが期待される.将来的には,操縦者と機材の安全を保ちつつ,より効率的な作業を実現することが目指される.

  • 渡邊 祥庸, 井上 和真, 池田 隆明, 志賀 正崇, 小林 雅人, 横山 和佳奈
    2024 年 5 巻 1 号 p. 260-268
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    小規模土工事に対して安価で簡易に3次元地形モデルを作成することを目的とし,スマートフォンLiDARとネットワーク型RTK測位サービスであるichimilを併用して作成した3次元地形点群データの精度を確認した.測量対象地に簡易標定点を設けて,簡易標定点ごとスマートフォンLiDARで3次元点群データを作成した.ichimilにより簡易標定点の座標を別途測定し,この座標を後付けでスマートフォンLiDARにより取得した3次元点群データに付与した.比較用データとしてUAV写真測量により3次元点群データを作成し,このデータに対してスマートフォンLiDARとichimilを併用して作成した3次元点群データの精度を確認することとした.その結果,平面・鉛直方向ともに200mm以内の誤差に収まっており部分払い出来形測量の要求精度は満足していることを確認した.

  • 田中 成典, 中村 健二, 寺口 敏生, 山本 雄平, 坂本 一磨, 中原 匡哉, 楠本 巨樹, 岩本 達真
    2024 年 5 巻 1 号 p. 269-280
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    Web制作技術の進歩に伴い,世界中でWeb サイトが日々大量に生産され続けている.地域活性化を拠点として注目を集めている道の駅では,多種多様な地域の魅力の発信が不十分な課題から道の駅ごとの Webサイトの制作や運用が見直されている状況である.ユーザはWeb検索の検索順位が上位のWebサイトを閲覧することが一般的であるため,道の駅のWeb サイトを検索上位に表示することが重要である.そのため,Webサイトの運営者は,Web検索エンジンのランキング付けアルゴリズムの評価観点の動向を把握し,それに対して自身のWebサイトにSEO(Search Engine Optimization)対策を実施する必要がある.しかし,SEO対策として考えられる膨大な対策項目の中から,どの項目に効果がありWeb サイトに優先的に適用すべき内容なのかを分析する方法は確立されておらず,自身のWebサイトが取るべき対策方針の立案が困難である.そこで,本研究では,Webサイトの主となるキーワードに関連する検索クエリ群を用いてWeb検索エンジンから取得するWebページを網羅的に分析することで,SEO対策の項目を検索順位との関連性から評価する手法を提案する.

  • 久保 栞, 金井 純子, 磯打 千雅子
    2024 年 5 巻 1 号 p. 282-290
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    社会福祉施設における事業継続計画(BCP)の策定に際し,職員参集の基準を明確に定めることは,利用者および職員の安全を確保する上で重要である.しかし,従来のハザードマップを使用して,災害時の具体的なシナリオを時系列的に想像し,計画を策定することは困難である.本研究では,河川の氾濫による浸水を想定し,BCP策定のための群衆シミュレーションを実施した.本シミュレーションにより,各地域に居住する職員が,安全に施設へ移動できる時間帯や経路を把握することが可能となった.これにより,BCP策定,特に職員参集の最適なタイミングや方法をより具体的に計画するための新たなアプローチとしての可能性が示唆された.今後,社会福祉施設において,本研究成果を活用したBCP 策定に関するワークショップを実施し,その有用性を評価する.

  • 小橋川 嘉樹, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 高山 純一
    2024 年 5 巻 1 号 p. 291-298
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/09
    ジャーナル オープンアクセス

    一般に地震災害の規模は最大震度で表現される場合が多いが,被災者の生活に対する影響を考えるにあたっては人口の分布や構成なども踏まえた解釈が必要である.本研究ではこの課題に対応するため,気象庁が公表している推計震度分布と国勢調査メッシュ統計を組み合わせて震度別の人口等を算出する一連の手法を開発し,令和6年能登半島地震を対象に実際に適用した.その結果広い範囲で生じた大規模地震の影響を定量的に分析することができ,地震の影響範囲やその偏りについて定量的かつ網羅的な把握を行うことができるようになった.またメッシュ統計の活用により少ない計算量で様々なデータ(属性別など)を容易に分析可能となり,発災直後から迅速な活用が可能な手法とすることができた.

feedback
Top