抄録
本研究では地方自体において長期的な低炭素社会へのロードマップ(行程表)を構築する手法を開発する.行程表を推計するためのツールとして施策の実施主体の費用負担を考慮して施策実施スケジュールを推計するバックキャスティングツール(BCT)を開発する.これを滋賀県に適用しておよそ240の施策からなる行程表を構築した.滋賀県はすでに2030年の低炭素目標及びその時点で導入されているべき施策を策定しており,本研究ではそれらの施策を2030年までに全て実施するための行程表を2010年から2030年の期間で推計した.その結果,期間全体で必要とされる累積費用は7.3兆円となり,そのうち約17%が公的部門の費用となった.累積排出削減量は101MtCO2で平均削減費用は7.3万円/tCO2となった.これらの費用をどのようにして調達するか,また,国,県,市町のそれぞれがどれだけを負担するか,といった議論が必要であると考えられる.