抄録
気候変動計算や気象予報の数値計算が広く行われており,地球上の水や大気循環の底面境界である接地境界層の境界条件としてMonin-Obukhovの対数分布と線形型を組み合わせた(Log+Linear則)風速分布を用いることが多い.しかし,Monin-Obukhovの安定度スケールは代数式であるために,数値計算に用いるには不向きである.また,大気が不安定のときに混合長の長さスケールが負になり,物理的な解釈が非常に困難である.さらに,不安定の時に現れる混合層の鉛直スケールは必ずアプリオリに与える必要がある.本研究ではこれらの問題点を解決すべく,安定度を考慮したより物理的に厳密な混合距離に関する新たな微分方程式を提案した.既存の代数式安定度スケールによる風速分布及び実測の風速分布との比較より,提案する新たな接地境界層の安定度スケールに関する微分方程式の適用性を検証した.