2018 年 74 巻 5 号 p. I_369-I_378
変動性再生可能エネルギー大量導入下では,デマンドレスポンス(DR)や蓄電池など,電力系統安定化策の導入が不可欠となる.電力システム分析には主に電力部門に特化した電源モデルが使用されるが,同モデル単体ではDR可能な技術の実施量や低炭素目標下の電力需要量等が推計できない.本研究では,エネルギーシステム全体を考慮可能な技術積み上げ型モデルの情報と電源モデルを組み合わせ,長期低炭素シナリオ下の系統安定化策実施量を推計した.その結果,蓄電池やDR等の系統安定化策の組み合わせにより,低炭素シナリオの下での発電費用を約7.7%(1.6兆円)削減可能であることが示された.加えて,2040年頃には現在の揚水発電の発電容量を越える規模の短周期変動用蓄電池の導入が必要となること,火力発電の設備利用率が25%まで低下すること等が示された.