2006 年 10 巻 1 号 p. 62-71
【目的】咀嚼と嚥下の協調運動の解明を目的に,摂食・嚥下過程を食塊位置によって区分し,各位相における顎運動を分析した.
【方法】個性正常咬合を有する健常成人12名 (28.8±3.7歳) を対象に,バリウムクッキー8gを自由咀嚼させ,VFにて側面像を,DVカメラにて前額断でみた顎運動を同時記録した.食塊位置により食物移送の各位相を以下の4期に分類した.Stage 1 transport:捕食された食物が臼歯部へと運ばれる区間,Pr㏄essing (以下,Process):食物が噛み砕かれ唾液と混合される区間,Stage 2 transport (以下,Stage 2):食塊が口峡を越えてから喉頭蓋谷に達するまでの区間,Hypopharyngeal transit time:食塊が喉頭蓋谷を越えてから食道入口部を通過する区間.咀嚼時顎運動パターンから,側方移動が大きいType 1と側方移動が小さいType 2に分類し,ProcessとStage 2における咀嚼サイクルの最大開口量,側方変位量,咀嚼周期,位相時間,総咀嚼・嚥下時間に対する各位相時間の割合 (以下,位相時間率) について検討した.
【結果】Type 1はType 2よりもProcess時間が有意に短かった.Type 1では,ProcessとStage 2の間で最大開口量,側方変位量,咀嚼周期に変化を認めず,時間的差異も認めなかった.Type 2では,Processに比べてStage 2の位相時間,位相時間率,最大開口量が有意に縮小した.
【考察】咀嚼時顎運動パターンの違いによって顎運動と食物移送動態が異なることが示唆された.