日本透析医学会雑誌
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症例報告
滑落後に野外に留まり横紋筋融解症から急性腎不全を発症した高齢者の1例
平戸 佳奈矢嶋 淳木内 孝樹小野 孝彦
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2016 年 49 巻 4 号 p. 291-295

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抄録

症例は70歳代の男性. 主訴は意識障害であり既往歴として脂質異常症でロスバスタチンにて治療中であった. 日常生活動作 (ADL) は自立しており認知症状もなく, 服薬コンプライアンスは良好であり, 定期的に通院していた. 山の畑に行く途中で斜面を滑落し, 下部のフェンスに倒れているところを捜索中の住民に発見され, 当院へ救急搬送された. 来院時CPK 4,814U/L, 尿ミオグロビン6,528ng/mLから横紋筋融解症と診断し補液が行われた. 腹部CTでは明らかな腎萎縮は認めなかったが血清クレアチニン (Cre) 3.08mg/dLと急性腎不全を認めたため, 第2病日より血液透析濾過 (HDF) を開始し, 2日間実施したところ, 第5病日には血清Cre値は正常化した. 横紋筋融解症の原因としては, 野外に2日間飲食せずに留まりHMG-CoA還元酵素阻害薬の服用下で脱水をきたしたことが影響した可能性が考えられた. 今後の課題として, 一人暮らしの高齢者に対して, 地域でサポートする体制が必要と思われた.

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© 2016 一般社団法人 日本透析医学会
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