日本臨床救急医学会雑誌
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調査・報告
所沢市における院外アドレナリン投与の現状とその効果
粕谷 康夫大河原 治平阪本 敏久
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2010 年 13 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

2006年4月から院外心肺停止傷病者(以下「CPA」と略す)に対して,救急救命士(以下「救命士」と略す)によるアドレナリン投与が可能になった。そこで,所沢市における院外アドレナリン投与の現状を調べその効果を検討した。2006年4月から2008年3月の2年間に救急車で搬送された8歳以上のCPAは348例で,そのうち63例(18.1%)にアドレナリンが投与されていた。アドレナリン投与群と非投与群での転帰は,各々病院到着前の心拍再開が30.2% vs 12.6%(p<0,05),1ヶ月生存7.9% vs 9.1%(p=076),社会復帰0% vs 67%(p<0.05)であった。院外でのアドレナリン投与は病院到着前の心拍再開率を向上させたが,1ヶ月生存率に差はなく,社会復帰事例は皆無であった。また,アドレナリンが院外で投与された群と病院入室後に投与された群で,心拍再開率に差がなかった。アドレナリン投与による心拍再開をいかに社会復帰につなげるかが今後の課題である。

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© 2010 日本臨床救急医学会
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