2021 年 24 巻 3 号 p. 420-424
徐脈は頸髄損傷患者において重篤な合併症である。今回,頸髄損傷後の症候性徐脈に対し,シロスタゾールが有効であった症例を経験した。症例は82歳,男性。交通事故のため当院に搬送された。第5/6頸椎の脱臼骨折,左椎骨動脈解離を認めた。第3頸髄以下の完全麻痺,神経原性ショックを認め,ドパミンを一時的に使用した。ドパミン中止後から徐脈傾向となった。第8病日のcomputed tomography(CT)で椎骨動脈解離が原因と思われる小脳梗塞を指摘された。しかしながら自覚症状はなく経過観察とした。第26病日,体位変換時に著明な徐脈となり心停止に至った。神経学的異常なく自己心拍再開したが,その後も徐脈が続いていたためシロスタゾールを開始した。以後,心拍数は改善傾向となり,症候性徐脈はみられなくなった。頸髄損傷後の症候性徐脈に対し,シロスタゾールが効果的であったと考えられた。