日本婦人科腫瘍学会雑誌
Online ISSN : 2436-8156
Print ISSN : 1347-8559
原著
実臨床における新規卵巣癌マーカーTFPI2の有用性に関する検討
前花 知果川口 龍二上林 潤也西川 恭平樋口 渚河原 直紀岩井 加奈山田 有紀
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2024 年 42 巻 2 号 p. 205-213

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抄録

概要:卵巣癌は早期発見が難しく予後不良であり早期発見が求められる.Tissue Factor Pathway Inhibitor 2(TFPI2)は,卵巣明細胞癌を高い特異度で鑑別できる腫瘍マーカーとして2021年4月に保険収載となった.保険収載後における実臨床でのデータ蓄積はまだ少ないため,卵巣癌診断におけるTFPI2の有用性を検討した.対象は保険収載後から2023年5月までの期間に卵巣腫瘍にて手術を行い,病理組織診断の確定した124例で,その内訳は良性腫瘍67例(54.0%),境界悪性腫瘍12例(9.7%),悪性腫瘍45例(36.3%)であった.良性腫瘍群と境界悪性腫瘍および悪性腫瘍を合わせた群との比較,良性腫瘍および境界悪性腫瘍を合わせた群と悪性腫瘍群との比較,明細胞癌群と非明細胞癌群との比較ではそれぞれCA125,TFPI2ともに有意差をもって鑑別可能であり,明細胞癌群と卵巣子宮内膜症性嚢胞群との比較ではCA125では有意差を認めないもののTFPI2では有意差をもって鑑別可能であった.これらの結果より実臨床においてもTFPI2は既存の腫瘍マーカー同様に有用であることが分かった.

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