トリクロロエタンを含む防水スプレーの吸入後,一過性の肺血流障害と右心負荷所見を呈した42歳男性例を報告する。吸入後,胸痛・呼吸困難が出現し,心電図,心臓超音波検査では右室負荷所見を呈した。胸部X線写真ではびまん性スリガラス様陰影と右下肺野のX線透過生亢進を示し,肺血流シンチグラムでは両側上葉の陰影欠損,肺動脈造影では右上葉の肺動脈に狭小化を認めた。なお,自覚症状,右心負荷所見は数日で軽快した。本症例から,防水スプレーの病態として肺血流や肺間質の障害から一過性の右心負荷を生じることが示され,さらに防水スプレー吸入後に肺高血圧症,急性肺性心を起こし重篤な中毒症状を呈する可能性が示唆された。