日本乳酸菌学会誌
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総説
Lactobacillus brevis SBC8803 株の機能と生理活性物質であるポリリン酸の同定
瀬川 修一
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2014 年 25 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

プロバイオティクスは腸管恒常性維持に寄与し、ヒトの健康に有益な効果をもたらす。我々は保存乳酸菌ライブラリーからTh1/Th2 バランスの改善を指標としてLactobacillus brevis SBC8803 株を選抜し、この乳酸菌株のⅠ型アレルギー抑制作用、アルコール性肝障害抑制作用、腸管保護作用を評価してきた。今回我々は、L. brevis SBC8803 株の培養液から腸管バリア機能を増強する物質を分離・精製し、その化合物を同定した。活性の評価は、細胞保護作用が報告されている誘導性熱ショックタンパク質HSP27 のCaco2/bbe 株における発現を指標として行った。培養液を硫安沈殿、DEAE 陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、HPLC により分離・精製した結果、生理活性物質としてポリリン酸が同定された。ポリリン酸キナーゼによりATP から合成されたポリリン酸は酸化ストレスによる腸管バリア機能の低下を抑制した。また、DSS 投与マウスへのポリリン酸の注腸投与はマウスの生存率を延長し、大腸における炎症性サイトカインの発現亢進を抑制した。本研究からポリリン酸が腸管保護作用を有することが明らかとなった。今後、ポリリン酸を大量に産生する菌株の選抜や改良などによって、より効果の高いプロバイオティクス食品を開発できると期待している。

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© 2014 日本乳酸菌学会
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