日本乳酸菌学会誌
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総説
乳酸菌に特異な脂肪酸代謝と代謝産物の生理機能について
岸野 重信小川 順
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2017 年 28 巻 2 号 p. 58-65

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抄録

食品成分の代謝には、宿主の代謝のみならず、腸内細菌による代謝が少なからず関わっている。したがって、腸内細菌による食品成分の代謝を把握し、代謝産物が健康に与える影響を評価することが、健康維持のためにも重要である。本総説では、脂質、特に不飽和脂肪酸の代謝に関する最近の知見について紹介する。

食用油脂に広く含まれているリノール酸が腸内細菌の代表でもある乳酸菌により飽和化される新規な代謝が見出され、水酸化脂肪酸、オキソ脂肪酸、共役脂肪酸などが代謝中間体として存在し、さらにこれらの代謝中間体が宿主組織において腸内細菌依存的に存在することが明らかとなった。また、これらの代謝中間体が、脂質代謝改善作用、抗糖尿病作用、腸管上皮バリア保護機能、抗炎症作用、抗酸化作用など、様々な生理機能を有することも見出している。これらの知見は、腸内細菌の脂肪酸代謝に依存して生成する特異な脂肪酸が、宿主の健康に何らかの影響を与えている可能性を示している。

さらに、様々な不飽和脂肪酸代謝に関わる乳酸菌由来酵素群を活用することにより、様々な修飾脂肪酸を生産することが可能となることから、今後さらなる機能性脂肪酸開発が期待される。

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© 2017 日本乳酸菌学会
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