2020 年 31 巻 2 号 p. 77-83
消化管への細菌の定着は、腸内細菌の生存戦略を理解するうえで重要である。細菌の菌体表層に局在する接着因子は、宿主と細菌の相互作用にかかわる。Moonlighting protein(ムーンライティングタンパク質)は、主となる機能に加え、異なる複数のはたらきを示すタンパク質の総称である。ムーンライティングタンパク質の多くは、解糖系、シャペロン、タンパク質合成など細菌の生命維持に重要な役割を持つが、菌体外へと分泌され菌体表層に留まることで、接着因子としての機能を発揮する。本総説では、ムーンライティングタンパク質のひとつ翻訳伸長因子(EF-Tu)に焦点を当て、腸内細菌の接着因子を介した定着過程について述べる。さらに、ムーンライティングタンパク質の生体内での挙動を評価するための新しい実験手法についても紹介したい。