2020 年 4 巻 2 号 p. 41-48
心理的エンパワーメントは意味,能力,自己決定,影響の4次元から構成されるが,これまでの研究において,次元相互の関係は検討されておらず,また,個人的な規定因が検討されることは少なかった。本研究の目的は,状況的・個人的な要因が従業員の心理的エンパワーメントの各次元に与える影響,および各次元間の関係を質的に明らかにすることにある。大手ホテルの従業員14名に対するインタビュー調査データをグラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した結果,「あこがれ・夢」「接客志向性」「学習志向」等の個人的要因や,「同僚との人間関係」「任された経験」「上司からの支援」といった状況的要因が,「サービスの工夫」を促進し,その結果として,「顧客との関係」が強まり「顧客から感謝」されるプロセスを通して心理的エンパワーメントが促進されることが明らかになった。