2015年に施行された食品表示法による製造者表示の運用厳格化に着目し,運用厳格化が消費者のPBに対する態度や,PBの購買に与える影響について検討した。その結果,食品表示法によって小売業の食品のPBの製造者の情報開示がなされることで,小売業やPBの信頼度を高め,PBの購入を拡大させる可能性が示唆された。一方で影響の大きさについては,消費者の裏面表示に対する意識が高まらなければ小さなものであることが示唆された。
心理的エンパワーメントは意味,能力,自己決定,影響の4次元から構成されるが,これまでの研究において,次元相互の関係は検討されておらず,また,個人的な規定因が検討されることは少なかった。本研究の目的は,状況的・個人的な要因が従業員の心理的エンパワーメントの各次元に与える影響,および各次元間の関係を質的に明らかにすることにある。大手ホテルの従業員14名に対するインタビュー調査データをグラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した結果,「あこがれ・夢」「接客志向性」「学習志向」等の個人的要因や,「同僚との人間関係」「任された経験」「上司からの支援」といった状況的要因が,「サービスの工夫」を促進し,その結果として,「顧客との関係」が強まり「顧客から感謝」されるプロセスを通して心理的エンパワーメントが促進されることが明らかになった。
擬人化は,製品・ブランドにおける購買行動の決定因として注目が高まっている。近年では,擬人化された製品・ブランドと自己概念の関係性を取り上げた研究もおこなわれている。しかしながら,先行研究では,現段階において独自性の動機づけの高さなどの個人特性に着目するにとどまっている状況である。このため,他の自己概念に関する個人特性については議論の余地があり,まだ実証研究が十分に積み上げられていない段階といえる。本研究では,自己概念の領域で従来から取り上げられることが多く,精度の高い尺度も作成されている自尊感情に注目し,擬人化が自己とブランドの結びつきに及ぼす影響について検討している。本調査の結果,自尊感情の低い消費者は,ブランドが擬人化されていない場合よりも擬人化されている場合に,自己とブランドの結びつきを高く評価することが明らかになった。また,自尊感情の高い消費者では,こうした傾向が見られなかった。
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