2025 年 24 巻 p. 98-104
薬液吸い上げ操作時の注射器内筒の汚染が薬液汚染につながるのか, 注射器内筒のうち薬液汚染につながらない部位はあるのかを明らかにする目的で, アデノシン三リン酸 (adenosine triphosphate:ATP) と大腸菌を内筒に塗布して蒸留水の吸い上げ操作を行い, 蒸留水内への移行の有無について検討した. その結果, 操作に慣れている者が行う通常の吸い上げ動作ではATP値は上昇せず, 内筒に手指が触れたとしても薬液汚染にはつながらない可能性を示唆した. また, 10mlの注射器を用いて意図的に内筒を斜め下方向に強く圧をかけながら吸い上げる操作では, 1回の操作で大腸菌の増殖を認めたものもあり, 吸い上げ方法によっては薬液汚染のリスクがあることが示された. さらに, 内筒の細くカットされた箇所のみの塗布では, どの実験方法でも蒸留水内への移行は否定され, この箇所は操作時に触れてもよい箇所であることが明らかとなった.