これまで謎のベールに包まれていたリン代謝調節系は, その詳細が解明されるにつれ, 寿命や加齢に関して非常に重要な役割を演じていることが明らかにされた。特に老化抑制遺伝子Klothoの研究により, 「リンが老化を加速する」という概念が確立され, 線維芽細胞増殖因子 (FGF23) /Klotho/ビタミンD調節シグナルを介したリン代謝異常と各種疾患との関連が重要視されている。本研究では, 遺伝子改変動物や培養細胞を用いた基礎研究からFGF23/Klotho/ビタミンD調節シグナルが成長期から加齢におけるミネラル代謝の中核として機能していることを明らかにした。これらの研究成果は, 各種慢性疾患におけるビタミンDの栄養状態を維持することが老化を制御している可能性も示唆している。さらに, 現代高齢化社会で問題となる慢性腎臓病重症化予防や脳機能障害改善におけるリン・ビタミンD代謝を介する老化抑制機構の解明は, 栄養学的アプローチを可能とするために, より一層の健康長寿への応用が期待できるものと予想された。