日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
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73 巻, 1 号
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総説
  • (令和元年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
    金子 一郎
    2020 年 73 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/17
    ジャーナル フリー

    これまで謎のベールに包まれていたリン代謝調節系は, その詳細が解明されるにつれ, 寿命や加齢に関して非常に重要な役割を演じていることが明らかにされた。特に老化抑制遺伝子Klothoの研究により, 「リンが老化を加速する」という概念が確立され, 線維芽細胞増殖因子 (FGF23) /Klotho/ビタミンD調節シグナルを介したリン代謝異常と各種疾患との関連が重要視されている。本研究では, 遺伝子改変動物や培養細胞を用いた基礎研究からFGF23/Klotho/ビタミンD調節シグナルが成長期から加齢におけるミネラル代謝の中核として機能していることを明らかにした。これらの研究成果は, 各種慢性疾患におけるビタミンDの栄養状態を維持することが老化を制御している可能性も示唆している。さらに, 現代高齢化社会で問題となる慢性腎臓病重症化予防や脳機能障害改善におけるリン・ビタミンD代謝を介する老化抑制機構の解明は, 栄養学的アプローチを可能とするために, より一層の健康長寿への応用が期待できるものと予想された。

  • (令和元年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
    細野 崇
    2020 年 73 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/17
    ジャーナル フリー

    2018年の日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は28.1%であり, 2040年には35.3%になると推計されている。加齢は糖尿病, 運動機能障害, 動脈硬化, 骨粗鬆症, がん, 認知症などの様々な老化関連疾患の危険因子であること, これらの病気は発症までに長い年月がかかることから, 病気の予防法の確立が重要である。これまでに我々は, 食品因子を用いてがんと認知症の予防に関する研究を行ってきた。がん予防に関する研究では, ガーリック香気成分のジアリルトリスルフィドが大腸がん細胞の細胞周期の停止を介して細胞増殖を抑制することや, 肝臓の薬物代謝酵素の活性調節を介して発がん物質などの代謝を促進することを見出してきた。一方, 認知症予防に関する研究では, 加齢に伴って減少する多価不飽和脂肪酸の摂取が, アルツハイマー病モデルマウスの認知機能を改善することを報告した。以上の成績から, 食品因子の利用はがんやアルツハイマー病などの老化関連疾患を予防することが可能であることを示唆しており, 健康寿命の延伸への応用が期待される。

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