日本栄養・食糧学会誌
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総説
リン代謝調節機構
―腸管リン酸輸送の理解―
小宮 蒼東 彩生小池 萌塩𥔎 雄治瀬川 博子
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2024 年 77 巻 4 号 p. 247-253

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抄録

リン代謝調節の破綻は成長遅延のみならず, 腎臓病, 骨代謝異常をはじめとする慢性疾患発症に関与し, 多臓器の老化進行にも関与する。腎機能が正常な場合, リン代謝調節の主要な臓器は腎臓である。腎臓は, 食事または血中リン濃度の増加に応じて尿中リン排泄量を増加させることにより, リンの恒常性とバランスを効率的に維持している。慢性腎臓病における高リン血症は, 患者の症状におけるリスクファクターの一つとなることから, リン管理が重要である。高リン血症治療は, 食事指導によるリン摂取制限, 透析によるリン除去, 服薬による消化管でのリン酸吸収の抑制などがある。腸管におけるリン酸吸収は, 傍細胞経路を介する受動輸送とナトリウム (Na+) 依存性リン酸トランスポーターを介する経細胞経路が想定されている。通常, 傍細胞リン酸吸経路が中心的な経路であり, 経細胞リン酸吸収経路は, 成長期やリン欠乏時など体内でのリン要求が高い状態でその役割が果たされる。腸管リン酸吸収経路とその制御を理解することは, 高リン血症をより効果的に制御することにつながる。

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