社会の24時間化や高齢化に伴い, 睡眠に関する社会の関心が高まっている。慢性的な睡眠の乱れは, うつ病などの精神疾患や糖尿病などの生活習慣病の発症リスクを高めることが知られており, 睡眠障害は, 精神的, 肉体的, そして経済的な社会問題であると考えられている。筆者らは, 睡眠障害や睡眠障害に関連する疾患発症メカニズムの解明と, 慢性的な睡眠の乱れを早期発見するための非侵襲バイオマーカーの開発, 睡眠改善食品の開発などを目指して, ヒトの睡眠障害への外挿が可能なモデルマウスの開発を行ってきた。本モデルは, 回転かごケージの底に水を張り, マウスを不安定な回転かご上に留まらせるもので, 昼夜の活動リズムや睡眠覚醒リズムが減衰するとともに, レプチンの分泌減少による過食や, 耐糖能異常, 不安情動の亢進や認知機能の低下などが認められる。本稿では, 本モデルマウスを用いた睡眠改善食品の開発や, 睡眠の乱れにおける性差について紹介するとともに, 慢性的な睡眠の乱れを評価するための唾液を用いた非侵襲バイオマーカーの開発について紹介する。