日本栄養・食糧学会誌
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若年女子成人における毛髪中亜鉛濃度の頭皮直上からの長さによる変動
本郷 哲郎鈴木 継美石田 裕美鈴木 久乃
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1988 年 41 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

若年女子成人42人を対象に頭髪を頭皮直上で切断, 採取した。これを1.5cmずつの細片に切って亜鉛濃度 を測定し, 頭皮直上からの長さによる変動を明らかにするとともに, 毛髪採取の4カ月前に得た血漿および尿中の亜鉛濃度と比較した。また, 市販されている洗髪, 整髪用化粧品中の亜鉛濃度を測定した。
1) 市販されている洗髪用化粧品のうち一部のものが高濃度の亜鉛を含有していた。
2) 頭皮直上から1.5cmまでの部分の毛髪中亜鉛濃度の算術, 幾何平均値 (標準偏差) はそれぞれ193 (33), 191 (1.2) μg/gであった。
3) 頭皮に近い3部位の毛髪中亜鉛濃度の分布で, 全体の分布からはずれて高値を示した者が何例かあった。
4) コールドパーマの有無にかかわらず, 毛髪の長さが増すとともに亜鉛濃度が急速に上昇している者がみられた。
5) 毛髪中亜鉛濃度と血漿あるいは尿中亜鉛濃度との間には, 血液あるいは尿採取時に対応する毛髪部位を用いても有意な相関はなかった。
以上の結果より,
1) 毛髪中亜鉛濃度の変動に対しコールドパーマの影響はみられなかった。
2) 毛髪中亜鉛濃度の個人別, 部位別変動は亜鉛含量の高い化粧品の使用による毛髪への亜鉛の吸着による。
3) 外部からの汚染の影響が除かれた場合にのみ, 毛髪中亜鉛濃度は亜鉛の栄養状態の指標として有用となる可能性がある。

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