抄録
Hassab手術あるいはバルーン下逆行性経静脈的塞栓術 (B-RTO) により予防的治療を施行した胃穹窿部静脈瘤27例を対象に, 治療効果と肝機能の推移, 門脈血行動態の変化について検討し, その有効性について評価した.1.胃穹窿部静脈瘤は全例で消失し, 観察期間中に再発は認めなかった.2.重篤な合併症は手術施行例における難治性腹水が出現した1例のみであった.3.上腸間膜動脈造影所見で遠肝性血流を認め, かつ胃腎短絡路 (胃下横隔静脈短絡路) の最大径が10mm以上の症例では, 治療1年後にAlb値の有意な上昇とICG15分値の有意な改善を認めた.4.これら短絡路以外の側副血行路も認めた症例では, 治療後にRC陽性食道静脈瘤の出現を来す頻度が高かった (治療前42.9%, 4年84.1%) のに対して, 非併存例ではその頻度は低かった (治療前0%, 4年16.7%).以上より, 症例を適切に選択することができれば, 胃穹窿部静脈瘤に対する予防的治療の有効性は高いものと思われた.