抄録
本研究は、工芸職人のコンセプト生成過程の訓練において、メタファー表現が創造的な認知の構造を変える方向付け(ディレクション)の役割があることを探る。実験では二種類の方向付けが連続する課題を用いた。最初の方向付け(ディレクションA)は、オブジェクトの属性に焦点をあてる伝統的な方法の典型でありメタファー表現があまり用いられない。このディレクションAは職人が伝統的な考えと認知的な固執を有していることを確認するために用いられた。2回目の方向付け(ディレクションB)は、新規な方向付けであり、メタファー表現によって認知的固執から離れ、オブジェクトの属性を超える他のイメージを持つようになることを目的としている。10人のインドネシアの工芸職人を対象にAとBの二つのディレクションにおける認知プロセスを分析した結果、多数の連想概念がディレクションBで得られた。実験の結果から、メタファー表現が職人の認知的固執の変化に寄与することが分かった。