土壌の物理性
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Print ISSN : 0387-6012
凍結面近傍の不凍水量変化に基づく凍土の水分特性曲線と不飽和透水係数の検討
渡辺 晋生紀藤 哲矢坂井 勝取出 伸夫
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2010 年 116 巻 p. 9-18

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抄録

不飽和シルトロームの一次元カラム凍結実験において土中の温度,水分量,圧力水頭の変化を測定し,凍土の水分特性曲線と不飽和透水係数の検討を行った.温度の低下速度が氷の成長速度を上回る凍結面近傍においては,凍土が未凍土の水分特性曲線より過剰の不凍水を持つ非平衡状態が生じた.この非平衡の水分特性曲線を用いる θ 補正モデルを提案し,水分 · 熱移動モデルによる凍結過程の水分移動を数値計算した.そして,未凍土の水分移動特性を凍土に拡張した Harlan モデル,凍土の不飽和透水係数を氷量と抑制係数で減少させる K 補正モデルと比較検討をした.Harlan モデルは,未凍土から凍土への水分移動を過大評価した.K 補正モデルは,凍結過程の水分分布を概ね再現したが,凍結面における透水係数の急激な減少のため,実測値とは異なる液状水量と圧力水頭の極端な変化が凍結面に生じた.一方,θ 補正モデルは,凍結時の液状水量と圧力水頭をよく再現し,より物理的に妥当な凍土の不飽和透水係数を評価することができた.

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© 2010 土壌物理学会
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