脳卒中
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前交通動脈瘤術後の健忘症状に関する検討
堀田 二郎窪倉 孝道塩田 純一
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1997 年 19 巻 1 号 p. 34-39

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抄録

前交通動脈瘤術後の記憶障害出現のリスクについて検討するために, 当院にて根治手術を施行した破裂前交通動脈瘤68例のうち健忘症状を評価しうる49例を対象に, 健忘症状を残さず自立した群, 作話症状を呈さない健忘症状残存群, 作話症状を加えた健忘症状残存群, の3群について, 術前重症度, 動脈瘤の発育方向, 種々の臨床放射線学的因子などについて検討を加えた.さらに健忘症状残存群のうち8例について詳細な神経心理検査を施行し, 健忘症状残存群における作話症状出現の要因について検討を加えた.その結果, 術後健忘症状の出現に関与している因子は術前意識レベル・術前神経学的重症度・術前CT所見による出血量.動脈瘤の発育方向 (上方向き) ・術後CT所見による前脳基底部を中心とした低吸収域出現の有無, であり, 作話症状の出現はより広範なくも膜下出血に起因すると考えられた.また記憶障害が無い例には作話症状は認められず, また経過中に記憶障害が消失した例では作話も消失した.しかし, 記憶障害の程度と作話症状出現との間には相関は認められなかった.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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