抄録
悪性腫瘍の過凝固状態に合併したと思われる両頸部深部静脈血栓症という稀な症例を経験した.症例は66歳,男性.顔面の浮腫と頭痛を主訴に精査を行ったところ,両頸部深部静脈血栓症,右肺腫瘍を認めた.有症状であったため,緊急手術を行った.血栓は両側内頸静脈から上大静脈まで及んでおり,術中の肺動脈血栓塞栓症を回避するため,胸骨正中切開下に上大静脈-右房合流部を単純遮断したうえで血栓除去を行った.プラスチック製吸引管を上大静脈横切開口から直接静脈内に挿入し,吸引しながら血栓を除去した.左内頸静脈は血栓除去が困難なため無名静脈で結紮した.右内頸静脈の血流は再開したが,血栓が残存したため,術直後に上大静脈に一時留置型静脈フィルターを留置した.術後,症状はすみやかに改善し,抗凝固療法により約3カ月で右内頸静脈に残存した血栓は完全に消失した.